日本の肥料調達リスクが高まり、国産化と効率利用の強化が課題に
中東情勢の混迷が深まるなか、日本の農業を支える肥料の安定調達に新たな不透明感が広がっている。輸入原料への依存が大きい構造のもとで、肥料価格の上昇は農家の経営負担だけでなく、今後の食料価格にも影響し得る。
ハイライト
- JA全農は6〜10月の肥料価格を基準品で5%引き上げ、国際供給網の脆弱性と相場高騰を反映した決定を行った。
- 日本はベトナム、モロッコ、カナダへ肥料調達先を拡大中だが、原料産地の偏在や国産化進展の遅れが課題となっている。
- 政府には国産肥料開発や農業技術最適化への支援拡大が求められ、肥料コストの食品価格波及リスクも意識されている。
価格上昇が映す供給網の脆弱性
日本経済新聞が伝えたところによると、全国農業協同組合連合会(JA全農)は15日、6〜10月の肥料価格を基準品で5%引き上げると発表した。全農が年2回示す価格は国内取引の参考指標となっており、今回の引き上げは国際的な需給逼迫や相場高騰を反映した動きといえる。
日本は中東産肥料への依存度自体は高くないものの、中東が化学肥料の主要生産拠点であることから、地域情勢の悪化は世界の供給不安につながりやすい。農業分野ではすでに、2021年の中国による輸出制限や、2022年のウクライナ侵略を背景としたロシア産の調達難に直面しており、日本はベトナム、モロッコ、カナダなどへ調達先を広げて対応してきた。
国産肥料と農業技術の活用が焦点
ただ、化学肥料は原料の産地が偏在しており、調達先の分散だけでは十分とは言い切れない。国内では家畜排せつ物由来の堆肥や下水汚泥に含まれる有効成分の利用に向けて、企業や自治体が技術開発を進めているが、性能面の課題から広範な実用化には至っていない。このため、政府には開発主体どうしの技術連携を後押しする仕組みづくりと、国産肥料の普及に向けた支援拡大が求められる。あわせて、衛星画像やAIで作物の生育状況を分析し、施肥量の最適化につなげる取り組みも重要で、過剰使用の抑制やコスト管理の改善に結びつく可能性がある。
一方で、農業現場では高齢化が進んでおり、こうした技術の導入には資金支援だけでなく、データを扱える人材や運用体制の整備も欠かせない。肥料コストの上昇が将来的に食品価格へ波及する可能性を踏まえると、供給網の強靱化と生産性向上を同時に進めることが日本農業の課題となる。
当社の以前の記事では、中東危機の長期化で原油価格や肥料輸送に不確実性が高まるなか、G7財務相・中央銀行総裁会議が原油・肥料の安定供給や代替調達の協調策を主要議題に据えた点を整理しました。ホルムズ海峡を巡る緊張が続けば、肥料貿易の停滞を通じて食料安全保障にも波及し得るとして、同志国での供給網強化や戦略備蓄の枠組みづくりも論点になっていました。
- Forex
- Crypto