中東エネルギー施設の復旧需要拡大、日本勢関与の7施設周辺で被害判明

中東エネルギー施設の復旧需要拡大、日本勢関与の7施設周辺で被害判明
中東復旧需要拡大

米国とイランの軍事衝突を受け、中東では日本企業が関与した石油・ガス施設の周辺でも攻撃被害が広がっている。復旧費用は最大580億ドルに達する可能性があり、地域インフラの再建需要は日本企業の事業機会とエネルギー安全保障の両面に影響を及ぼしている。

ハイライト

  • 日本企業が関与したカタール、UAE、バーレーン、イランの少なくとも7つの石油・ガス施設周辺でミサイル・ドローン被害が判明、例えばラスラファン工業団地では熱交換器の倒壊等が観測された。
  • 中東エネルギー関連インフラの修復・復旧費用は最大580億ドルに達する可能性があり、国際競争激化の中、日本の投資シェアは03〜10年の約10%から19〜26年には3%台に低下した。
  • UAEやイラクなどが新パイプライン整備を加速しており、輸送経路多様化が進展する中で日本の関与強化やエネルギー安全保障対応が重要課題となっている。

衛星画像が示す被害実態

日本経済新聞の衛星画像分析や現地映像、国営企業の公表情報によると、軍事衝突後に日本企業が関与した少なくとも7つの石油・ガス施設周辺で、ミサイルやドローンによる攻撃被害が確認されている。調査対象にはカタールのラスラファン工業団地のほか、UAEのハブシャンガス複合施設、バーレーンのシトラ製油所一帯、イランのアサルイエ団地などが含まれる。

カタールのラスラファン工業団地では、千代田化工建設が関与したLNGプラント周辺で熱交換器の倒壊や消火活動とみられる痕跡が確認された。衛星画像分析に協力したエネルギー経済社会研究所の松尾豪代表は、重要設備である熱交換器が狙われた可能性が高く、復旧に3年ほどかかる可能性があるとみている。

日揮ホールディングスは、被害を受けた施設名は明らかにしていない一方、顧客から施設回復に関する相談を受けている例があるとした。UAEのルワイス工業都市で同社が建設中の施設には直接被害がないという。東洋エンジニアリングは、関与した設備の被害状況を把握できておらず、通信遮断などから未確認情報や報道に頼らざるを得ない状況だとしている。

千代田化工建設はラスラファンの別地区でLNGプラント新設を進めており、27年中の完工を目指している。軍事衝突後はいったん工事を中断したが、5月に一時退避していた駐在員を現場に戻し、本格再開に踏み切っている。

復興需要と中東投資の競争

欧州調査会社ライスタッド・エナジーの4月15日時点の報告では、中東のエネルギー関連インフラの修復・復旧費用は460億ドル、最大で580億ドルに達する可能性がある。イタリアはすでに復旧支援に名乗りを上げており、メローニ首相は4月のカタール訪問時にエネルギーインフラ復旧へ貢献する用意を示している。

日本は1973年の石油危機以降に中東での関与を強めたが、その後は投資や事業参画が徐々に減少した。英フィナンシャル・タイムズのfDiマーケットに基づく2003年以降のデータでは、日本の中東エネルギー関連投資の世界シェアは03〜10年の約10%から、19〜26年には3%台まで低下した。一方で中国は5%から7%近くへ拡大し、インドの存在感も増している。

慶応義塾大学の田中浩一郎教授は、日本企業では人材や機材の余力が細っており、復興特需がどの程度続くか不透明な中で他地域を後回しにして参入を急ぐかは疑問だと指摘する。日本エネルギー経済研究所の小山堅首席研究員も、中国の方が日本より高いリスクを取って事業参入する姿勢が強い可能性があるとみる。

中東ではホルムズ海峡依存を減らす動きも加速している。UAEのADNOCは西部油田と東部フジャイラ港を結ぶパイプラインを27年に稼働する計画で、完成すればオマーン湾から輸出できる原油量は倍増する。イラクもバスラとハディーサを結ぶ日量250万バレルのパイプライン建設に着手しており、日本にとっても代替輸送路への関与はエネルギー安全保障上の重要課題となっている。

当サイトの以前の記事では、中東情勢の混乱を背景に航空燃料価格が上昇し、ANAとJALが国際線の燃油特別付加運賃を7月・8月発券分で引き上げる見通しを伝えました。北米線・欧州線を中心に付加運賃が過去最高水準に近づく可能性があり、夏の旅行需要や航空各社の収益運営への影響が焦点となっていました。

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