日本の石化供給網、中東依存のナフサ調達逼迫で価格転嫁圧力

日本の石化供給網、中東依存のナフサ調達逼迫で価格転嫁圧力
ナフサ供給逼迫拡大

中東情勢の緊迫化を受け、日本の石油化学産業では原油とナフサの安定調達が大きな課題になっている。ナフサは日用品から建材まで幅広い最終製品の出発原料であり、供給制約の長期化は生産維持と製品価格の双方に影響する。

ハイライト

  • 2025年の日本国内ナフサ需要3347万キロリットルのうち、実質中東依存度は8割で、輸入比率が22年以降7割超に上昇。
  • ナフサスポット価格が約2倍に高騰、国産・中東以外の調達増も一時的措置にとどまり、エチレン設備で減産対応が進行中。
  • 包装用プラスチック、不織布、塩化ビニールなど幅広い製品で値上げが相次ぎ、価格転嫁圧力が川下製品にも波及拡大。

ナフサ供給網の構造と調達逼迫

日本経済新聞のまとめによると、ナフサは原油を製油所で精製する過程で得られ、日本国内には19カ所の製油所がある。原油は加熱炉で約350度に加熱された後、蒸留塔で沸点差を使って各製品に分離され、30度から180度の範囲で精製されるナフサは原油の約10%を占める。

ナフサは国内精製由来の国産品と輸入品に大別され、エチレン生産設備で約800度まで加熱すると熱分解を起こし、エチレンやプロピレン、ブタジエン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの基礎化学品になる。これらは塩化ビニール、ポリエチレン、ポリプロピレン、合成ゴム、ABS樹脂、ポリエステル繊維、溶剤などの原料となり、供給網は川下に進むほど細分化する。

国内のナフサ総需要は25年に3347万キロリットルで、このうち国産が4割、中東からの輸入が4割超、中東以外からの輸入が2割弱を占める。国産ナフサの原料となる原油でも9割を中東に依存しており、実質的な中東依存度は8割に達する。

輸入ナフサに占める中東比率は、2022年のウクライナ危機以降、5割から6割程度から7割超へ上昇している。足元では米国、アルジェリア、オーストラリアなど中東以外からの調達を増やし、1カ月当たりの輸入量は4月に倍増し、5月以降は3倍程度を見込むが、イランとの軍事衝突前と同水準の総量確保は難しいため、国内のエチレン設備の多くは減産で稼働維持を図っている。

石化製品と消費財への波及

国内のエチレン生産設備は12基あり、年間生産能力は616万トンで、各コンビナートの中核設備となっている。米国などではエタン由来の生産もあるが、日本はナフサを主原料とするため、エチレンだけでなくプロピレンやベンゼンなど多品種を生産できる一方、調達面では中東リスクの影響を受けやすい。

中東以外からの調達拡大は進むものの、多くは長期契約ではなくスポット購入で、緊急時の一時的な補塡策にとどまる。ナフサ相場の上昇でスポット価格も2倍程度に高騰しており、原料高を自助努力だけで吸収することは難しく、値上げは避けにくい状況だ。

すでに食品や医薬品の包装向けプラスチック、不織布原料、繊維、建材向け塩化ビニール樹脂などで値上げが相次いでいる。価格転嫁は原料段階から川中、川下へ広がっており、家庭用の食品向け密閉保存袋や食用油、包材コスト上昇の影響を受ける豆腐など、身近な製品にも波及する見通しだ。

ホルムズ海峡の事実上の封鎖は、日本の幅広い製品が石油とナフサに依存している実態を改めて浮き彫りにしている。日本は石油の国家備蓄は進めてきたが、ナフサ備蓄は十分ではなく、地政学リスクを踏まえた安定供給網の再構築が今後の課題になる。

当社の以前の記事では、ホルムズ海峡を巡る緊張の高まりを背景に、三井OSKの関連船が通航料を支払わずに同海峡を通過し、今後も支払いを拒否する方針を示した点を整理しました。イランが通過船舶に通航料を求めている可能性があるなかで一部船舶の足止めも報じられ、航路リスクがエネルギー輸送の継続性や企業の個別判断に直結している状況が浮き彫りになっています。

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