ベインキャピタル傘下で再建を進めてきたヨーク・ホールディングスは、構造改革の一巡を受けて成長投資を加速する。2028年度までに食品スーパーを中心に約1500億円を投じ、既存店改装や新規出店を通じて上場を見据えた競争力強化を進める。
ハイライト
- ヨークHDは2028年度までに成長投資額を従来比400億円増の約1500億円とし、85%を食品スーパーの新規出店・改装へ振り向ける。
- イトーヨーカ堂は2028年度までに全体の2割強となる約100店舗の改装を計画し、PB売上高は3年間で3割増を目指す。
- 7月にIPO準備室を設置し2028年上場を視野に入れるが、子会社成長戦略や収益目標の具体的提示はまだ不十分。
1500億円投資の中身と改装計画
日本経済新聞によると、ヨークHDは6月18日の事業方針説明会で、従来約1100億円としていた投資計画を約400億円積み増し、2028年度までに約1500億円の成長投資を実施する方針を示した。投資額の85%をイトーヨーカ堂やヨークベニマルなど食品スーパーの新規出店と既存店改装に振り向けるほか、総菜工場やデジタル分野にも配分する。
イトーヨーカ堂は2026年度に大森店やアリオ市原店などの旗艦店を改装し、ヨークベニマルの東北10店舗を含め計30店舗を手がける計画だ。2027年度以降は首都圏の大型店にも広げ、2028年度までに全体の2割強にあたる約100店舗を改装する。食品売り場では古い陳列設備を更新し、豊洲市場から直送した鮮魚の対面販売イベント「市場祭り」に対応しやすい売り場づくりや、需要が伸びる冷凍食品売り場の什器拡充も進める。
商品面ではプライベートブランドの強化も進める。低価格PB「セブン・ザ・プライス」は、2027年2月期に商品数を前期末比で約3割増の400品程度へ広げ、ヨーカ堂とベニマルの低価格PB売上高を2028年度に2025年度比で3倍にする計画だ。PB全体でも3年間で売上高を3割増やす方針で、2028年度の連結売上高は2025年度の1兆5671億円に比べて10%以上増を目指す。
再成長への転換と上場への課題
今回の積極投資は、店舗閉鎖や人員削減を含む構造改革が一巡したことを背景にしている。イトーヨーカ堂は2023年3月に、2026年2月期までに全国店舗を2割超減らす改革を打ち出し、約2年間で茨城県や千葉県などの34店舗を閉鎖した。こうした見直しが収益改善につながり、イトーヨーカ堂の2026年2月期営業利益は前期比7倍の222億円と22年ぶりの高水準になっている。ロフトやデニーズジャパンも過去最高益を更新するなど、主要子会社の業績は改善している。一方で、首都圏ではライフコーポレーションなど大手スーパーとの競争が強まり、イオンの「まいばすけっと」のような小型スーパーも出店を拡大している。実質賃金の伸び悩みや、中東情勢を受けたメーカー値上げの予定もあり、個人消費の先行きには不透明感が残る。
説明会では最短で2028年としてきたIPO構想に関連し、7月にIPO準備室を設置する方針も示した。ただ、事業会社別の売上高や営業利益の目標は明示されず、ロフトや赤ちゃん本舗、デニーズジャパンを含む約30社の成長戦略も十分には示されていない。積極投資を実際の再成長につなげ、上場への道筋を具体化できるかが今後の焦点になる。
当サイトの以前の記事では、日本企業で経営者報酬をTSRやROEなど中長期の業績指標に連動させる比率が高まっている点を取り上げました。基本報酬や短期インセンティブの比重が相対的に低下する中で、研究開発や成長投資に取り組みやすい報酬設計へと転換が進み、企業価値の持続的な向上を後押しする動きが強まっています。
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