中東情勢の混乱で、プラスチック原料のナフサや食料生産を支える肥料など、暮らしに直結する物資の供給網の脆弱さが改めて浮き彫りになっている。緊急時の優先供給体制づくりに加え、調達先の分散や国内生産基盤の強化を官民で進める必要がある。
ハイライト
- 日本のナフサ供給の6割が中東依存で、ホルムズ海峡封鎖懸念から6月以降の安定調達に不確実性が生じている。
- 政府はナフサ由来化学品を経済安全保障推進法の特定重要物資に追加指定し、設備投資や供給維持体制の支援強化を検討している。
- 日本の化学肥料はほぼ全量輸入で、グローバル調達競争の激化や国内生産の不安定さを受けて多様な調達先の確保と自給率向上が急務となった。
ナフサ供給の可視化と備蓄体制
日本経済新聞の社説では、ナフサが食品トレーや医療用器具、バナナ熟成用ガス、ガムなど幅広い生活関連製品に使われており、供給停止時の影響が大きいと指摘している。国内供給の4割は国産だが、6割は中東産を主とする輸入品で、国産分の原油も大半を中東に依存しており、今回の混乱で供給網の弱さが露呈している。
政府は燃料の安定供給を重視してきた一方、産業素材であるナフサの確保は主に民間企業に委ねてきた。経済産業省も流通の全体像を十分に把握できておらず、ホルムズ海峡封鎖が不安を増幅させている。豊田合成の安田洋副社長は4月28日の決算発表で、ナフサは5月末までは確保できるが、6月のどこかで懸念が出るとの情報があると説明した。
高市早苗首相は4月30日、中東以外からの代替調達によりナフサ供給は年を越えて継続できるとの見通しを示した。ただ、当面の危機回避に加え、中長期の対策が欠かせない。政府は経済安全保障推進法の「特定重要物資」にナフサ由来の化学品を新たに追加指定する考えで、指定されれば設備投資支援や緊急時の供給維持体制の整備が進む可能性がある。
今後は、入出荷や在庫を含むサプライチェーン全体の可視化を進め、どこで不足や滞留が起きているかを迅速に把握できる体制づくりが求められる。供給が細った際に医療分野など人命に関わる用途へ優先配分する計画を、事業継続計画の観点から官民で事前に合意しておくことが重要になる。
肥料自給率向上と調達先分散の必要性
肥料でもホルムズ海峡封鎖による供給懸念が表面化している。国連貿易開発会議、UNCTADによると、同海峡を通過する肥料は海上経由の世界の肥料貿易の約3分の1を占める。日本は化学肥料のほぼ全量を輸入に頼っており、中東依存度は高くないものの、海峡封鎖以降は世界的な争奪戦の様相が強まり、秋以降の十分な調達に見通しが立っていないとする肥料会社もある。国内では下水汚泥から肥料を生産する研究が進むが、自治体や民間企業ごとの個別対応にとどまり、品質の安定やコストに課題が残る。技術の共有や量産体制の整備を政府主導で進め、自給率向上を後押しする必要がある。
同時に、国内供給網の強化だけでは限界があるため、特定地域への依存を減らす調達戦略も欠かせない。各国・地域との連携を平時から深め、一定のコスト負担を許容しながら調達ルートを多様化することが、生活必需物資の供給途絶リスクを抑えるうえで重要になる。
当社の以前の記事では、中東情勢を背景にナフサ不足が意識され、包装資材コストの上昇を通じて食品の値上げ圧力が強まっている状況を整理しました。帝国データバンクの調査結果を踏まえ、夏から秋にかけて価格改定が再燃し得ることや、山崎製パンなど各社の値上げ・販売休止の動きが広がりつつある点を伝えました。
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