日本のAI電力基盤整備、成長と脱炭素の両立が課題に

日本のAI電力基盤整備、成長と脱炭素の両立が課題に
AI電力基盤の課題

AIの普及が産業競争力を左右するなか、日本ではデータセンターの拡大に対応した安定的な電力確保と効率利用が重要課題になっている。中東情勢の混乱でエネルギー供給不安が意識されるなか、電源、通信網、地域受容を一体で整える構想が将来の成長戦略の土台になる。

ハイライト

  • OCCTOは2035年度の国内需要電力量を8472億キロワット時・26年度比5.3%増と見込み、AI基盤整備の加速が必要と指摘。
  • 政府の「ワット・ビット連携」政策は地方へのデータセンター立地と再生可能エネルギー活用促進を狙い、都市集中や災害リスク分散にも貢献。
  • NTTは電気信号の光信号化で電力消費100分の1を目指し、ホンダ・日産もEV電池を活用したV2G実証で再生エネ普及支援に着手。

需要増とインフラ再設計

日本経済新聞の社説では、電力広域的運営推進機関(OCCTO)が2035年度の国内需要電力量を8472億キロワット時とし、26年度比で5.3%増えると見込んでいる点を踏まえ、AI時代の基盤整備を急ぐ必要性を示している。人口減少や省エネ機器の普及は需要抑制に働く一方、半導体工場や新増設が続くデータセンターが電力需要を押し上げる構図だ。

データセンターは生成AI向けサービスにとどまらず、工場のロボットや自動運転車など物理空間で使うAIの学習、高度化も支える重要インフラと位置づけられる。その一方で、発電能力を無制限に積み増すのではなく、発電設備、送電網、データセンター配置を含めた効率的な電力利用が求められている。

政府が25年に打ち出した「ワット・ビット連携」は、再生可能エネルギーを確保しやすい地方にデータセンターを置き、処理データを光ファイバーで大都市へ送る構想だ。環境負荷の抑制に加え、都市集中の回避や広域災害への備えにもつながるため、データセンター整備の有力な指針となる。

電源面では、U.S.の大手テクノロジー企業がデータセンター向けに原子力発電を活用する流れも広がっている。日本でも安全確保を前提に、休止中の原発再稼働を選択肢の一つとして検討する余地があり、価格変動の大きい化石燃料への依存低下も課題になる。

技術革新と地域受容の両立

成長を持続させるには、電力の安定供給だけでなく、省電力技術や分散型エネルギー活用を通じた需要側の革新も欠かせない。NTTは演算や通信で使う電気信号を光信号に置き換える技術の開発と実用化を進めており、電力消費を現在の100分の1程度まで抑えることを目指している。

EVの活用も選択肢になる。蓄電池を搭載したEVを送電網につなぐV2Gは、余剰時に充電し、不足時に電力を戻すことで、出力が不安定な再生可能エネルギーの調整弁として機能する可能性がある。ホンダなどが実証を始め、日産自動車も4月に計画を公表している。

一方で、AIインフラ整備は社会的受容なしには進まない。U.S.では電気料金の上昇や環境負荷の拡大を懸念してデータセンター建設に反対する住民運動が起きており、日本でも住環境悪化への不安から反発が出る事例がある。

環境影響の可視化や対策の徹底、地域との丁寧な対話が欠かせず、誰かを犠牲にする形では持続可能なAI社会は築けない。エネルギー危機への対応を、電力安定供給、脱炭素、新産業育成を同時に進める革新の起点にできるかが、日本の成長力を左右する。

当社の以前の記事では、日本政府がUAEと原油の安定供給拡大や産油国共同備蓄の増量について協議し、供給網の強化を図った動きを整理しました。中東情勢の緊迫化で供給・物流リスクが高まるなか、輸入の約4割を占めるUAEからの調達安定化がエネルギー安全保障に直結する点を取り上げています。

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