三菱商事、中東リスク受け天然ガス投資を拡大

三菱商事、中東リスク受け天然ガス投資を拡大
三菱商事、ガス投資拡大

中東の軍事緊張と世界的な電力需要の増加を受け、総合商社のエネルギー戦略は脱炭素一辺倒から安定調達重視へと傾いている。三菱商事は2030年度までの温暖化ガス排出削減目標を緩和し、中東以外でLNGを含む天然ガスへの投資を広げる。

ハイライト

  • 三菱商事は中東リスクを受け2030年度の温暖化ガス削減目標を「30%〜半減」に緩和し、天然ガス投資を拡大。
  • 約1.2兆円でエーソンを買収しU.S.に新たな天然ガス供給網を構築、2025年度からカナダLNGも出荷開始。
  • 商社各社が中東依存リスク回避へ調達先多極化を進め、増産やサプライチェーン分散でエネルギー供給体制を再構築。

2030年度目標の見直しと供給網再構築

日本経済新聞によると、三菱商事は1日の決算記者会見で、2030年度までに2020年度比で温暖化ガス排出量を半減させるとしていた目標を「30%〜半減」に見直した。2050年までに排出量を実質ゼロにする長期目標は維持する一方、足元では地政学リスクの高まりを踏まえて事業方針を修正する。

中西勝也社長は、中東情勢を含む地政学リスクが顕在化し、脱炭素社会への国際協調の前提が揺らいでいると説明する。2025年の第2次トランプU.S.政権の発足後に世界の脱炭素の流れが後退し、さらに2026年2月のU.S.とイスラエルによるイラン攻撃でエネルギー調達環境が大きく変わったという認識を示す。

同社は現実的な対応策として、LNGを含む天然ガスを重視する。生成AIの普及で世界の電力需要が高まるなか、再生可能エネルギーだけでは需要を賄い切れず、安定供給と価格、脱炭素の3要素を同時に満たす手段として天然ガスの位置づけが高まっている。

三菱商事は6月までに、天然ガスを開発するエーソンを負債を含め約1.2兆円で買収する予定だ。買収をてこにU.S.で新たな天然ガス供給網を築き、同国で運営するガス火力発電所への供給や、代替需要が高まるU.S.産LNGの輸出拡大につなげる考えだ。

加えて、カナダのLNG新事業は2025年度に出荷を始めており、今後の拡張計画もある。三井物産などと共同出資するU.S.のキャメロンLNGも増産方針で、マレーシアやブルネイなどアジアの案件とあわせて調達先の分散を進める。

商社各社に広がる調達分散の動き

中東リスクへの対応は三菱商事にとどまらない。三井物産は1日に示した計画で、成長投資の積み上げにより2030年ごろに1.4兆円超の純利益を目指す方針を掲げ、堀健一社長は2028年度までの投資で規律を高め、要求リターンも引き上げる考えを示した。

丸紅も今期はリスク低減を徹底する方針で、サプライチェーンの分散を重視している。中東からのナフサ調達量が多い一方で、中東以外の代替調達先を見つけているとし、LNGの短期トレードでも需要取り込みを狙う。

ただ、中東情勢の正常化時期について各社の見方は分かれる。三井物産は2026年7〜9月の平常化を前提とする一方、伊藤忠商事は軍事衝突自体は6月末に収束すると見込みながらも、事業への影響は2026年内に続くとみる。

仮にU.S.とイランの軍事衝突が終結しても、貿易環境の不透明感は残る。ホルムズ海峡を経由する石油や天然ガス、石化製品の供給が揺らいだことで、商社が前提としてきた国際取引の枠組みは変質しており、エネルギー業界では調達先の多極化と投資判断の迅速化が一段と重要になっている。

当社の以前の記事では、三菱商事が2027年3月期の連結純利益を前期比37%増の1兆1000億円と見込み、増配方針も示した点を取り上げました。液化天然ガス(LNG)や銅など資源市況の持ち直しに加え、米天然ガス開発会社エーソンの約1.2兆円買収やカナダLNG事業など既存投資の本格寄与が、収益押し上げ要因として挙げられています。

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