高齢者医療の3割負担拡大、経済学者の76%が支持

高齢者医療の3割負担拡大、経済学者の76%が支持
高齢者医療負担拡大支持

厚生労働省が10月から高齢者医療制度の見直し議論を始めるなか、医療費の窓口負担を3割とする対象拡大に賛成する見方が経済学者の間で優勢になっている。年50兆円に迫る国民医療費のうち65歳以上が約6割を占めており、医療保険財政の持続性と世代間負担の公平性が制度改革の論点になっている。

ハイライト

  • 経済学者調査で76%が高齢者の医療費3割負担拡大を支持し、自民党と維新は2026年末までに制度改革工程表を作成予定。
  • 調査では、負担拡大が高齢者の健康状態に平均的な悪化をもたらすかについて「悪化しない」38%、「悪化する」12%、「どちらともいえない」42%と意見が割れた。
  • 専門家は高額療養費制度など安全網の維持や低所得・持病高齢者への配慮が不可欠とし、一部で家計逼迫リスクや健康悪化を懸念。

制度見直し議論と調査結果

日本経済新聞社と日本経済研究センターの「エコノミクスパネル」によると、経済学者50人を対象に15日から20日に実施した調査で、窓口負担を3割とする対象の拡大について「そう思う」が52%、「強くそう思う」が24%となり、合計76%が支持した。「そう思わない」は6%だった。

現在の窓口負担は、現役世代が3割、70〜74歳が2割、75歳以上が1割が原則となっている。自民党と日本維新の会は高齢者の窓口負担引き上げを協議しており、2026年末までに制度改革の工程表をまとめる方針だ。

支持意見では、負担能力のある高齢者にも応分の負担を求めるべきだとの見方が目立つ。一橋大の臼井恵美子教授は、医療保険財政の持続可能性と世代間の公平性の観点から拡大は望ましいと指摘した。政策研究大学院大の安田洋祐教授も、高齢者の就業率や健康寿命の伸びを踏まえれば、負担能力のある高齢者に3割を求めるのは合理的だとしている。

一方で、年齢で負担水準を区切ることの副作用を懸念する声もある。東京大の大橋弘教授は、高額な治療を70歳以降に先送りする誘因が生じ、早期治療による健康維持や就労継続、生産性向上を妨げかねないとみている。

家計と受診行動への影響

制度見直しでは、患者負担の引き上げが受診控えや健康悪化につながるかが大きな焦点になる。調査では、3割負担の対象拡大で高齢者の健康状態が平均的に悪化するかについて、「どちらともいえない」が42%、「悪化しない」が38%、「悪化する」が12%となり、見解は割れた。

慎重論では、高額療養費制度などの安全網維持を求める意見が目立つ。東京大の重岡仁教授は、窓口負担の引き上げで必要な受診まで減る可能性があるとして、低所得者や医療需要の高い人への配慮が不可欠だとした。立教大の安藤道人教授も、国際的にみて3割の負担割合は高いとしたうえで、高齢期の所得や健康の格差を考慮しなければ一部高齢者の家計逼迫につながると強調した。

健康影響を巡っては、既存研究で平均的な悪影響は限定的との見方がある一方、低所得者や持病のある人では負の影響が出る可能性も指摘されている。慶応義塾大の井深陽子教授は、米国の大規模実験では健康リスクの高い低所得者への悪影響も示されているとして、日本でも数年後を含めた検証が必要だとの見方を示している。

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