過去最大の最終赤字を計上したニコンが、事業の選択と集中を軸に次の5年の成長戦略を打ち出している。2031年3月期までに半導体製造装置、宇宙・防衛、カメラ事業へ約3500億円を投じ、売上収益1兆円とROE10%を目指す。
ハイライト
- ニコンは2031年3月期までに総額3500億円の成長投資を実施し、半導体装置と防衛・宇宙分野を成長の柱とする。
- 2026年3月期の連結最終損益は860億円の赤字、売上収益6771億円で、金属3Dプリンター事業の減損などが主因。
- EssilorLuxotticaはニコン株の保有比率を2024年4月時点で19.61%に引き上げ、市場は業績低迷を受け慎重姿勢。
中計の重点分野と投資計画
日本経済新聞によると、ニコンは8日に2031年3月期までの中期経営計画を発表し、まず経営の健全化を進めながら戦略分野の絞り込みと投資規律の見直しを進める。4月に就任した大村泰弘社長兼CEOは記者会見で、選んだ事業を大きく伸ばす経営へ明確にかじを切ると述べている。
同社の26年3月期の連結最終損益は860億円の赤字と、前の期の61億円の黒字から大幅に悪化した。売上収益は5%減の6771億円で、2023年に買収したドイツの金属3Dプリンター大手の不振に伴い、のれんなどの減損損失を計上したことが響いている。
成長の中心に据えるのは半導体製造装置で、2028年をめどに2機種の露光装置を投入する方針だ。2026年内には後工程向け露光装置を展開し、2028年度をめどに前工程向けのArF液浸露光装置も投入する計画で、既存製品の受注拡大にも力を入れる。
一方で、26年3月期の精機部門は営業赤字45億円と前の期の15億円の黒字から悪化している。同社はこの部門の営業利益を31年3月期に330億円へ引き上げ、映像部門に次ぐ収益の柱へ育てる考えだ。
競争環境と市場の評価
ニコンは最先端分野でASML Holdingとの正面競争を避け、準先端と位置づけるArF領域で需要を取り込む構えを示している。大村社長は、ArF露光装置でつくる半導体も増えており、1社依存のリスクを避けたい大手メーカーの期待に応えられれば拡販は可能だとの見方を示している。金属3Dプリンター事業でも再建を進める。800億円超を投じて買収したドイツ企業を通じて防衛・宇宙分野の顧客開拓を探り、28年3月期の黒字化と31年3月期の売上収益倍増を目標に据える。
ただ、業績低迷が続くなかで外部からの圧力も強まっている。フランスの眼鏡大手EssilorLuxotticaはニコン株の保有比率を4月公表時点で19.61%へ引き上げており、保有目的は長期純投資としているものの、追加取得や買収の意図は明らかになっていない。
市場の受け止めもなお慎重だ。岩井コスモ証券の斎藤和嘉シニアアナリストは、今回の中期計画について大胆な戦略を期待したが従来から大きな変化はなく、やや楽観的にも感じると話している。
当社の以前の記事では、原油安と地政学リスク後退を背景に投資家心理が改善し、東京市場で日経平均が大きく上昇した状況を整理しました。とくにSamsung ElectronicsやAMDなどの好決算を受けた半導体株高が物色を主導し、米国市場でのSOX・ナスダックの最高値更新が日本株にも波及した点が焦点でした。
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