日本の研究開発投資と理系人材の確保を巡る競争が強まるなか、経団連は科学技術立国に向けた戦略を示し、高専や大学理系学部の受け皿拡大を政府に求めた。官民の研究開発投資を2040年度に50兆円へ引き上げる目標も掲げ、教育政策と産業競争力の強化を一体で進める必要性を打ち出している。
ハイライト
- 経団連は2040年度までに官民の研究開発投資を現状の20兆円強から50兆円へ倍増する目標を公表。
- 高専の新設・再編や定員増、理系学部統廃合強化などを政府に提言し、教育基盤と人材育成の拡充を要望。
- 日本の研究開発投資のGDP比を5%へ引き上げる目標を掲げ、科学技術省新設や政策・資金配分の一体改革を要請。
2040年度投資目標と教育基盤の拡充策
日本経済新聞によると、経団連は11日に公表した「科学技術立国戦略」で、官民の研究開発投資額を現状の20兆円強から2040年度に50兆円まで引き上げる目標を示した。デフレ下で続いた「コストカット型」の経営から、国全体で「投資けん引型」へ転換すべきだと訴えている。
提言では、理系人材の不足と国際競争力の低下に警鐘を鳴らし、高等専門学校の新設や再編、定員増への政府支援を要望した。高専から大学への編入強化も求め、スイスの職業教育訓練制度を参考にした人材育成モデルを提案している。
大学教育については、学部の統廃合を通じて理系学部と定員を増やすよう促した。工学、農学、薬学などで産業界の実情に沿った実践教育が不足しているとし、創薬分野では抗体、遺伝子治療、高分子薬など先端技術の講義が不十分だとする企業側の声も盛り込んだ。
産業競争力と政策体制への波及
経団連は、高専、大学、地方自治体、業界団体が連携する分野別の「ナショナルトレーニングセンター(仮称)」の整備も検討するよう求めた。学生だけでなく、社会人の学び直しの機会を広げる狙いがある。筒井義信会長は11日の記者会見で、理系教育全体の受け皿拡充の重要性を強調した。研究開発投資についても「世界トップ水準」への引き上げが必要だと述べている。
OECDの推計では、2023年の日本の研究開発投資はGDP比3.42%で、韓国の4.96%、台湾の3.98%を下回る。経団連は日本の比率を5%へ高める目標も示し、政策立案と資金配分を一体的に進めるため、政府に「科学技術省」の新設も呼びかけた。
高市早苗政権はAI、半導体、量子、造船など17の戦略分野への集中投資を掲げている。日本成長戦略会議の分科会でも理工・デジタル系人材の不足が課題に挙がっており、大学全体で同分野などの定員を現在の35%から40年に50%へ高める目標を立てている。
当社の以前の記事では、米巨大IT各社がAI需要を追い風に2026年の設備投資を大幅に拡大し、データセンター関連需要が一段と膨らむ見通しを整理しました。一方で、メモリーなど部材価格やエネルギーコストの上昇が採算を圧迫し、投資拡大の持続性や日本企業も関わる供給網・地域経済への波及リスクになり得る点も取り上げています。
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