日本政府が進める労働時間規制の緩和論議は、裁量労働制の見直しを巡って労使の隔たりが大きく、夏以降の審議に持ち越される見通しとなっている。労働力人口の縮小やAIの進展を背景に、柔軟な働き方の拡大と長時間労働の防止をどう両立させるかが政策の焦点になっている。
ハイライト
- 成長戦略会議分科会は裁量労働制の見直し議論を夏以降の労働政策審議会に委ねる方針を示した。
- 経団連は5月、過半数労組企業での対象業務拡大および長時間労働者の適用除外を提言し、慎重な制度設計を要求している。
- 厚生労働省は夏に実態調査を実施し、変形労働時間制など労働時間規制全体を労政審で議論する計画を明らかにした。
制度見直しの論点と検討の先送り
日経によると、日本成長戦略会議の分科会は5月下旬、裁量労働制の見直しについて夏以降の労働政策審議会に議論を委ねる考えを示している。規制緩和を求める経営側と、適用拡大に慎重な労働側の主張に大きな開きがあるためだ。
裁量労働制では、あらかじめ労使で定めたみなし労働時間を基に賃金が支払われ、働き手が仕事の進め方や時間配分を決める。実際の労働時間を抑えつつ成果を高められれば、生産性向上やワークライフバランス改善につながる可能性がある。
制度は「企画業務型」と「専門業務型」に分かれ、専門業務型の対象は研究開発やシステム設計など20業務に限られている。経営側は企画営業などへの拡大を求める一方、連合など労働側は、裁量の乏しい働き手にも制度が広がれば長時間労働を助長しかねないと懸念している。
企業運営と労働市場への影響
制度の悪用や乱用を防ぐ必要がある点では労使の認識は一致しており、争点は適正運用をどう担保するかに移っている。個人の自律と健康を守る仕組みを整備しながら、対象業務を段階的に広げるかどうかが今後の議論の軸になる。経団連は5月中旬の提言で、労働時間が一定基準を超えた人を裁量労働制の適用対象から外す事例を示している。また、過半数労組がある企業に限って労使協議で対象業務を拡大できるよう求めているが、労組の交渉力には企業間で差があり、慎重な制度設計が必要とみられる。
裁量労働制と並んで、変形労働時間制の見直しも先送りとなっている。繁閑に応じて所定労働時間を調整できる制度については、中小企業から天候などによる業務量の急変に対応しにくいとの声が出ており、一定の柔軟性を求める圧力が続く。厚生労働省は夏に実施する裁量労働制の実態調査を踏まえ、労働時間規制全体を労政審で幅広く議論する方針だ。
当サイトの以前の記事では、春季労使交渉の賃上げ波及と物価上昇率の鈍化を背景に、4月の実質賃金がプラスを維持した点を整理しました。あわせて、ガソリン補助や教育費負担の軽減といった政策が物価を押し下げ、総実労働時間など雇用現場の指標にも影響が出ていることを伝えています。
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