日本政府は研究基盤の強化と高度人材の育成を軸に、2030年度までの科学技術投資と研究支援の道筋を示している。博士号取得者を年2万人、若手研究者の海外派遣を累計3万人とする目標を掲げ、AIや量子技術を含む重点分野の競争力底上げを狙う。
ハイライト
- 日本政府は統合イノベーション戦略を決定し、博士号取得者を現在の年1万5千人規模から2030年度に年2万人へ増加を目指す。
- 研究者支援強化のため、優秀な学生への年240万円程度の特別研究員制度拡充や、企業初任給水準を意識した研究奨励金増額を実施する方針。
- AIや量子技術を巡る国際競争が激化する中、日本の24年AI民間投資額は約9億ドルにとどまり、米国や中国に大きく後れを取っている。
研究人材育成と予算反映の工程
日本経済新聞によると、政府は10日に首相官邸で開いた総合科学技術・イノベーション会議で、統合イノベーション戦略を決定している。近く閣議決定し、第7期科学技術・イノベーション基本計画の初年度工程表として、27年度予算への反映を目指す。戦略では、政府が重点投資する17の戦略分野にAIや量子技術などを位置付け、研究開発から社会実装までを後押しする。人材育成では、博士号取得者を現在の年1万5千人規模から2030年度に年2万人へ引き上げる目標を置き、科学研究費補助金の拡充を通じて研究者個人への支援を強化する。
優秀な学生に年240万円程度を支援する特別研究員制度も拡充する方針だ。月額およそ20万円の研究奨励金は増額し、民間企業の初任給水準に見合う金額を目指す。
海外派遣拡大とAI研究基盤の競争力
海外経験を持つ研究者の層を厚くするため、政府は研究者や大学院生の海外派遣を組織的に進める大学への支援制度を整える。在外公館や政府機関の海外拠点も活用し、共同研究先や海外の研究動向に関する情報提供を進め、日本人研究者が海外で築いた知見や人脈を国内へ還元する体制を強化する。欧州の研究支援枠組み「ホライズン・ヨーロッパ」との連携や、海外で活躍する日本人研究者とのネットワーク構築も進める。文部科学省によると、24年度に31日以上の中長期で海外へ派遣された日本の研究者は4028人で、23年度より405人増えている。ただ、ピークだった2000年度の7674人の半数程度にとどまっており、若手研究者の国際経験不足が課題として残る。
研究成果の創出力を高める施策としては、研究の効率化を進める「AI for Science」を推進する。科学研究向けのAI基盤モデル開発を後押しし、研究設備やデータの共用を進めるほか、AI基本計画と連動して高性能AIの安全性や脆弱性の評価、サイバー攻撃への対応能力を高めるリスク評価体制の整備も進める。
こうした対応の背景には、AIや量子技術を巡る国際競争の激化がある。内閣府などによると、24年のAIへの民間投資額はU.S.が約1091億ドル、中国が約93億ドルだったのに対し、日本は約9億ドルにとどまり、米スタンフォード大のAI国力ランキングでも日本は9位だった。19〜21年の引用件数上位10%論文における国際共著論文数でも、日本は英国やドイツを下回っており、研究基盤と人材確保の両面でてこ入れが求められている。
当社の以前の記事では、政府が2030年までにバーティカルAI(領域特化型AI)への戦略的投資を進め、造船・創薬・防衛などの重点分野で社会実装を加速させる方針を取り上げました。あわせて、消防の119番通報にAIの自動応答や配置最適化を導入し、指令員の業務支援と人員不足地域の緊急対応力の底上げを狙う点も整理しています。
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