法務省、AI音声の無断利用巡る指針案で「声」の保護明記へ
生成AIによる肖像や音声の無断利用が収益化を伴って広がるなか、法務省は民事上の責任範囲を整理する指針の策定を進めている。8月にも公表する見通しの指針には、著名人らの声が法的保護の対象に含まれるとの見解を盛り込む方針だ。
ハイライト
- 法務省はAI音声の無断利用対策として8月公表予定の指針案で、声もパブリシティ権の対象に明記する方針を示した。
- JAPRO調査によると2025年6月からの約2カ月間でAIによる無断生成画像・動画が延べ4万3483件確認され、SNS閲覧数は約3億3500万回に達した。
- 芸能人や声優への経済的損失は約20億円から45億円と推計され、訴訟リスクと業界対応強化が予想される。
8月公表へ向けた指針案の骨子
日本経済新聞の報道によると、法務省は13日の検討会で、有識者に指針の原案を示している。原案は、声も人物を識別できる固有の情報であり人格の象徴だとして、著名人の財産的価値を守るパブリシティー権の対象に含まれると整理する。
現在は声の権利を直接定めた法律がなく、判例も限られている。このため指針案は、AIで本人の声をもとに無断生成した場合に、逸失した経済的利益への賠償に加え、肖像や声をみだりに利用されない利益の侵害に伴う慰謝料が同時に認められる余地があるとの見解も示している。
一方で、ものまねや声まねは原則として権利侵害に当たらないとし、本人の声を基にAIで生成するケースと区別する。検討会は、俳優の画像を使った動画や、歌手の声を学習させて特定の楽曲を歌わせる音源など、AI生成コンテンツで収益を得る事例を前提に議論を進めている。
法務省が裁判例の蓄積を待たずに8月にも指針をまとめるのは、行政として権利侵害に一定の歯止めをかける狙いがあるためだ。法的拘束力はないものの、AI利用者やクリエーターの判断材料となるほか、権利侵害を巡る訴訟で証拠として扱われる可能性もある。
拡大する被害と業界への影響
声を巡る権利侵害はすでに広がっている。5月の検討会では声優らが被害の実情を訴え、アニメやゲーム作品から抜き取られた音声が有料販売されたり、SNSで拡散されたりしていると説明している。訴訟にも発展しており、人気声優の津田健次郎氏は2025年11月、TikTokの運営会社に対して動画の削除を求め、東京地裁に提訴している。津田氏の声質を模したナレーション付き動画が複数投稿されたとされる。
NPO法人の肖像パブリシティ権擁護監視機構、JAPROの調査では、AIを使って芸能人の肖像や声優の声を無断生成したとみられる画像や動画が、2025年6月からの約2カ月間で延べ4万3483件確認された。SNSでの閲覧数は計約3億3500万回に達し、同機構は芸能人らの経済的損失を約20億円から45億円と試算している。
当サイトの以前の記事では、選挙期間中の偽情報対策を柱に、公職選挙法などの改正法が成立した点を整理しました。2027年春からSNS事業者に偽情報拡散の抑制策の公表義務が課され、生成AIで作成した選挙動画には表示ルールが適用されるなど、運用負担と説明責任の強化が焦点でした。
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