日本の財政目標達成、経済学者7割が困難視
高市早苗政権が2026年の骨太の方針で債務残高のGDP比を安定的に引き下げる目標を中核に据えるなか、経済学者の多くはその実現性に慎重な見方を示している。官民投資による成長加速を前提にした財政運営には、債務拡大や金利上昇のリスクを懸念する声が広がっている。
ハイライト
- 経済学者50人中70%が日本の債務残高GDP比の安定的引き下げ目標の達成を困難と回答した(日経等調査、6月21日発表)。
- 政府想定の370兆円超の官民投資で2031年度以降の潜在成長率1.4%→1.8%引き上げに関し、66%の経済学者が現実性に否定的。
- 2021~2025年度の潜在成長率平均が0.4%にとどまる中、規制緩和の必要性や政府投資判断への不安が複数の有識者から指摘された。
骨太方針の前提に強い懐疑
日本経済新聞によると、日本経済新聞社と日本経済研究センターのエコノミクスパネルによると、経済学者50人に15日から21日にかけて実施した調査では、債務残高GDP比を安定的に引き下げられるかとの問いに対し、「そう思わない」が50%、「全くそう思わない」が20%と、計70%を占めている。「そう思う」は6%にとどまっている。
高市政権は21日に2026年の骨太の方針を閣議決定し、債務残高GDP比の安定的な低下を財政運営の中核目標と位置付けている。日本の国・地方の債務残高はGDPの190%を超えており、大阪大の恩地一樹教授は、官民投資はGDP押し上げ効果が不確実な一方で、投資優遇などを通じて債務残高を増やす可能性が高いと指摘している。
内閣府の試算では、官民投資の効果が十分に出る高成長シナリオでは債務残高GDP比は低下するが、投資効果が中程度または不十分な場合は2030年度ごろから上昇する想定となっている。トロント大の伊神満准教授は高成長の前提を非現実的とみており、中央大の塩路悦朗教授は財政規律への疑念が国債金利の上昇を招く可能性に注意を促している。
一橋大の陣内了教授は、政府がより直接的に管理できる基礎的財政収支、PBを軸に財政運営を進めるべきだと主張している。これに対し、一橋大の砂川武貴教授は、2025年度までの3年間で債務残高GDP比が低下している点に注目し、長期金利の安定と緩やかなインフレ、実体経済の成長継続が達成の鍵になるとみている。
370兆円投資の成長効果に疑問
調査では、370兆円超の官民投資により2031年度以降の潜在成長率を1.4%から1.8%まで高められるとする政府試算の現実性についても見解を聞いている。「そう思わない」は56%、「全くそう思わない」は10%で、「どちらともいえない」の24%や「そう思う」の6%を大きく上回っている。内閣府によると、潜在成長率は2021年度から2025年度の平均で0.4%にとどまっている。政府は31年度以降、370兆円の官民投資などで成長率を1%台半ばへ高める想定だが、多くの経済学者は投資が技術進歩や生産性向上にどこまで結びつくかを疑問視している。
一橋大の森口千晶教授は、すべての官民投資が生産性向上に結びつくとは考えにくく、試算は現実的というより楽観的だとみている。慶応義塾大の藤原一平教授は、民間が自発的に新事業へ挑戦できる環境整備の方が潜在成長率の向上に有効だとして、規制緩和の必要性を訴えている。
東京大の佐藤泰裕教授は、政府主導の投資が十分な効果を持つかは事業の見極め次第だとみている。累積赤字540億円を抱えるクールジャパン機構を例に挙げ、政府の投資判断には不安が残るとの見方を示している。
当サイトの以前の記事では、2026年上半期の日本の輸出がAI関連需要の拡大を追い風に過去最高を更新し、半導体電子部品や非鉄金属が伸びた一方で、エネルギー調達コストの上昇などから貿易収支は赤字が続いている点を整理しました。輸出の強さが見える一方、円安や資源高による輸入負担が残り、外需の追い風だけでは景気や政策運営を楽観視しにくい状況が浮き彫りになっています。
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