日本の老後資金、家計差で必要額に開き

日本の老後資金、家計差で必要額に開き
老後資金、世帯で差

物価上昇が続くなかで、退職後に必要な資金額は一律ではなく、家計の支出水準や生活設計によって大きく変わる。共働きで公的年金収入が厚い世帯では実質的に追加資金がほぼ不要な場合もある一方、生活水準維持を重視する世帯では5000万円超を見込む余地もある。

ハイライト

  • 山崎俊輔氏は『老後2000万円』は平均的な目安にすぎず、家計や生活水準によって必要額は大きく異なると指摘。
  • 出費を意識的に抑えれば30年間で約1080万円、旅行期間を10年に限定すれば約840万円まで老後資金を圧縮できる可能性がある。
  • インフレと個人ごとの生活水準の違いによって老後必要資金は変動し、『老後2000万円』『老後4000万円』は可変的な目安となる。

必要額を左右する家計設計

Nikkeiの日経BOOKプラスの2026年5月7日付記事を再構成した内容として、ファイナンシャルプランナーの山崎俊輔氏は、新刊『老後に4000万円って本当ですか? 物価が上がる時代の退職後資産の考え方』で、「老後2000万円」は平均的な目安にすぎず、個人差が大きいと説明している。コロナ禍では外出や旅行の減少で支出が縮み、必要額が大幅に低下しうる一方、近年のインフレ局面では老後資金の想定額が上昇しやすくなっているという。

山崎氏は、出費を意識的に抑えれば必要資金を圧縮できるとみる。月1回の映画館や美術館、年1回の1泊2日旅行、孫への臨時支出などを織り込んでも月3万円程度に収まれば、30年間で約1080万円となる計算で、旅行を退職後10年程度に限定すれば約840万円まで抑えることも可能だとしている。

一方、会社員の共働き世帯で夫婦とも正社員として働いてきた場合は、合計年金額が月30万円超となるケースもあり、教養・娯楽費まで年金内で賄えれば、実質的に「老後ゼロ万円」となる可能性もあるとしている。逆に、現役時代の所得水準が高く、退職後も高い生活水準を維持したい層では、2000万円では足りず、5000万円以上を見込むケースもありうるとしている。

年金収入とインフレが与える影響

本文では、公的年金だけが定期収入の年金生活世帯は43.4%に上るものの、そうした世帯が一律に老後破綻しているわけではないと指摘している。食費や日用品などの日常支出を管理すれば、多くの世帯は公的年金の範囲内で家計を維持しており、生存中は受給が続く公的年金が基礎的な生活費を支える構図だとしている。

ただし、最低限の生活維持と、満足度の高い老後生活は別だと整理している。習い事や外食、小旅行といった娯楽支出に加え、老人ホーム入居資金、入院時の備え、葬儀費用などの安心資金を確保するには、一定の預貯金残高が必要になるためだ。

そのうえで山崎氏は、物価上昇による必要額の押し上げと、家計ごとの生活水準の違いは分けて考える必要があるとしている。つまり「老後2000万円」や「老後4000万円」は固定値ではなく、インフレと個人の支出選好の両方で上下する可変的な目安として捉えるべきだとしている。

当サイトの以前の記事では、2025年度に確定拠出年金(DC)の加入者が確定給付型に迫る見通しや、中小企業での導入拡大が進む一方で、給与減額型の制度が将来の厚生年金や各種給付に影響しうる点を取り上げました。福利厚生の名目と実態を点検し、制度が家計や受給見通しに与える影響を見極める必要があるという論点は、老後の必要資金を「固定値ではなく可変」として捉える本記事のテーマにもつながります。

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