政府、裁量労働制拡大の結論を年末へ先送り、労働時間制度改革の調整続く
政府は27日、労働市場改革分科会で今後の労働政策を巡るとりまとめ案を示し、裁量労働制の拡大は夏以降の議論を経て年末までに結論を出す方向とした。成長戦略の柱に位置づける考えを維持する一方、経済界と労働側の隔たりはなお大きく、制度設計の具体化は先送りされている。
ハイライト
- 政府は裁量労働制拡大の結論を年末以降に先送りし、夏以降の労働政策審議会での議論継続を明記した。
- 日本商工会議所調査で中小企業の19.1%が時間外労働上限の影響を受け、72.6%が柔軟な労働時間制度拡充を政府に要望している。
- とりまとめ案は、時間外労働規制の一律指導が企業活動を萎縮させているとの懸念から、労使合意や健康確保措置を尊重した対応への見直しを求めている。
裁量労働制見直しの論点
日本経済新聞が報じたところによると、政府が示したとりまとめ案は、裁量労働制の拡大について「夏以降の労働政策審議会において議論を行う必要がある」と明記するにとどめている。4月の日本成長戦略会議では、高市早苗首相が現場の実態や労使双方の立場を踏まえた検討加速を指示していたが、現時点で制度拡充の方向性は固まっていない。
経団連は13日に対象業務の拡大を求める提言を公表している。裁量労働制は、証券アナリストや弁護士など計20業種を対象とする専門業務型と、事業の企画、立案、調査、分析を担う企画業務型があり、経団連は特定顧客向けの商品、サービス開発や提案、交渉業務などの追加を求めている。
同時に経団連は、長時間労働の防止策として一定基準を超えた場合に制度適用から外す仕組みや、導入前の平均的な残業代を踏まえた手当の必要性にも触れている。分科会に出席した藤原清明専務理事は、乱用防止策を検討しつつ、適用を求める労働者の声にも応えたいと述べている。
これに対し連合は対象業務の拡大に強く反対している。芳野友子会長は18日に上野賢一郎厚労相と会談し、長時間労働を助長しかねない安易な拡大や導入要件の緩和を行うべきではないと要請し、27日の分科会でも神保政史事務局長が、規制緩和ではなく連続勤務規制や勤務間インターバル制度の義務化、つながらない権利の立法化を深めるべきだと強調している。
企業運営への影響と追加論点
年末に向けては、変形労働時間制の拡充も主要な論点になる。とりまとめ案は、他律的な要因に十分対応できていない現場の実態に加え、労働者の生活時間や予見可能性の確保にも留意しながら検討を進める必要があるとしている。変形労働時間制は、繁閑に応じて所定労働時間を調整できる仕組みで、月単位や年単位で法定範囲内に収まればよいが、年単位では30日前までの労使協定が必要で、期間中の計画変更は認められていない。日本商工会議所は、天候などに左右される突発業務に対応できるよう、合意までの期間短縮や計画変更を認める措置を求めている。
日商が25日に公表した中小企業の働き方改革に関する調査では、1724社のうち19.1%が時間外労働の上限規制強化で事業への制約が生じていると回答した。政府に求める対応策として、変形労働時間制などを拡充する柔軟な労働時間制度を挙げた企業は72.6%に達しており、労働時間規制の見直しは中小企業の運営面でも重いテーマになっている。
また、とりまとめ案は労働基準監督署の指導のあり方にも言及している。時間外労働を月45時間以内に抑えるよう求める一律の指導が企業活動の萎縮につながっているとの声を踏まえ、重大、悪質な事案には厳正に対応しつつ、労使合意にのっとった労働時間管理や健康確保措置に沿う形へ速やかに見直す必要があるとしている。
当社の以前の記事では、政府が成長戦略の一環として、AIや半導体など戦略17分野の人材育成に向けた「閣僚認定のリスキリング講座」を創設し、教育訓練給付金で受講費の最大80%を補助する枠組みを検討している点を整理しました。同時に、とりまとめ案では裁量労働制や変形労働時間制の拡大は結論を先送りし、夏以降に労働政策審議会で継続議論と位置づけられたことも取り上げています。
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