北海道新幹線の延伸工事は完成時期の遅れと建設費の膨張が続くなかで、入札の公正性そのものが問われる局面に入っている。公的負担を伴う大型インフラ事業だけに、談合によって工事費が不当に高止まりしていたなら、事業全体への国民の理解を一段と損ないかねない。
ハイライト
- 公正取引委員会が北海道新幹線軌道敷設工事で建設会社9社に独禁法違反容疑で立ち入り検査し、一部で官製談合の疑いが浮上。
- 5工区の入札で落札額が予定価格の94〜99%と高く、関係9社が全てJR系資本で透明性と競争性への懸念が拡大。
- 総工費が当初見通しの約1兆6700億円から3兆円超に膨張、財務省も事業費用対効果に悲観的な試算を発表。
入札疑惑と事業運営の課題
日本経済新聞によると、公正取引委員会は北海道新幹線の軌道敷設工事の入札を巡り、独占禁止法違反, 不当な取引制限の疑いで建設会社9社に立ち入り検査している。発注元の鉄道建設・運輸施設整備支援機構の側が関与した官製談合の疑いもあり、一般競争入札で事前に受注業者が決まっていた可能性が焦点になっている。
入札が実施された5工区では、立ち入りを受けた5社がそれぞれ落札し、予定価格に対する落札額の割合は94〜99%と高水準だった。9社はいずれもJRと資本関係があるとされ、競争入札の実効性や発注手続きの透明性に疑問が広がっている。
北海道新幹線は国主導の整備新幹線で、機構が施設を建設, 保有し、JR北海道に貸し付ける方式を採る。建設費はJR各社の施設貸付料に加え、残額を国と地元自治体が2対1の割合で負担する仕組みであり、入札の適正さは財政規律の面でも重要になる。
費用膨張と業界慣行への懸念
新函館北斗, 札幌間の延伸工事は現在も続くが、当初目指した30年度末の完成予定は大幅にずれ込み、総工費も当初の約1兆6700億円から3兆円超へ膨らむ見通しだ。財務省は4月、事業全体の費用対効果について「中止すべき水準にある」との試算を示しており、今回の疑惑は厳しい採算環境のなかで浮上している。背景には、専門技術を持つ企業が限られることや、入札不調で工期がさらに遅れることへの懸念があるとの見方もある。ただ、そうした事情が自由な価格競争を妨げる行為を正当化する余地はない。
新幹線工事を巡っては、2013年の北陸新幹線の融雪設備工事、2017年のリニア中央新幹線の駅建設工事でも談合が明るみに出ており、いずれも刑事事件になった。業界全体に不正を容認する風潮が残るとの印象を強める事案であり、公取委の調査を踏まえた実態解明と再発防止の仕組みづくりが急がれる。
当社の以前の記事では、改正外為法の成立を受けて、対日外国投資の審査が強化され、日本版CFIUS(対日外国投資委員会)の創設準備が進む点を整理しました。重要技術やインフラ分野を中心に審査対象が広がる一方で、投資を不必要に冷やさないためには、判断基準の透明性と運用の予見可能性をどう確保するかが焦点だと指摘しています。
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