日本の出生率低下が続くなか、少子化対策の効果を巡っては家計支援より就業継続を支える制度整備を重視する見方が広がっている。経済学者50人への調査では、子育て世帯向けの現金給付を優先度の高い政策とみなさない回答が50%を占め、政府が進める支援金制度の費用対効果も論点になっている。
ハイライト
- 経済学者50人中50%が児童手当等の現金給付は少子化対策として優先度が高くないと回答。
- 政府は2026年度に子ども・子育て支援金制度で6000億円を徴収し、2028年度には1兆円に引き上げる計画を進行。
- 2025年の出生率は1.14で過去最低を更新し、政策論議は出生数押し上げ策と人口減への適応策双方に広がっている。
現金給付の優先度と制度の論点
日本経済新聞によると、日本経済新聞社と日本経済研究センターの「エコノミクスパネル」によると、出生率を引き上げる政策として児童手当などの現金給付を優先度が高いとみる回答は限られる。50人の経済学者への調査では、「全くそう思わない」が10%、「そう思わない」が40%で、計50%が優先度は高くないと答えている。
一方で「そう思う」は12%、「どちらともいえない」は36%だった。中室牧子・慶応義塾大学教授は、現金給付には出生率を一定程度押し上げる効果が確認されているものの効果は限定的で、保育サービスや働き方改革を含む総合支援が重要だと指摘する。
政府は4月に子ども・子育て支援金制度を始め、公的医療保険料への上乗せで国民と企業から広く徴収し、児童手当拡充の財源などに充てている。2026年度の徴収額は6000億円を見込み、段階的に引き上げて2028年度には1兆円を集める計画で、児童手当の2026年度予算額は2.1兆円にのぼる。
濱秋純哉・法政大学准教授は、仕事と家庭の両立を支える環境整備が日本では不十分だとし、現金給付が子ども1人当たりの教育費の上積みに回る可能性があるため、出生数の増加に直結するとは限らないとの見方を示す。保田彩子・カリフォルニア大学デービス校教授も、母親に育児負担が偏る構造を変えないまま資金支援だけを拡大しても効果は限られるとしている。
出生率反転策への見方と政策含意
調査では、現在の出生率低下トレンドを反転させる実現可能な少子化対策があるかどうかも聞いている。「どちらともいえない」が38%で最も多かったが、「存在する」は34%、「存在しない」は26%だった。政府は2023年策定の「こども未来戦略」で少子化トレンドの反転を基本方針に据えるが、2025年の出生率は前年比0.01ポイント低下の1.14で過去最低となり、10年連続で低下している。こうしたなか、調査では出産や育児でキャリアが途切れない仕組みや、家族形成を支える制度改革を求める意見が目立つ。
星岳雄・東京大学教授は、男女の賃金格差の縮小につながる政策が、男女双方のキャリアと家事・育児の両立を促し、出生率上昇につながる可能性があるとみる。松井彰彦・東京大学教授は、婚姻率低下が出生数減少に大きく寄与しているとして、「子育て支援」から「家族形成支援」への発想転換を訴える。
一方で、出生率の反転そのものに慎重な見方もある。笠原博幸・ブリティッシュコロンビア大学教授は、出生率低下が緩やかなほど移民、生産性、就業参加、社会保障調整への適応時間を確保できるとし、現実的な目標は反転より緩和と歯止めだと指摘する。重岡仁・東京大学教授は、少子化の継続を前提に社会保障や労働市場のあり方を設計する方が現実的だとしており、政策論議は出生率押し上げ策と人口減への適応策の両面に広がっている。
当社の以前の記事では、長期金利の上昇によりJASSO第二種奨学金(有利子)の返済負担が重くなり、卒業時期によって返済総額の差が広がっている点を整理しました。上限利率の引き下げや激変緩和措置、所得連動型返済・減額や猶予制度の周知強化など、制度の再設計が課題だと報じています。
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