医療費窓口負担の資産勘案、経済学者の54%が支持

医療費窓口負担の資産勘案、経済学者の54%が支持
資産勘案に54%賛成

高齢者の医療費窓口負担を決める基準を巡り、所得に加えて資産も支払い能力の判断材料に含めるべきかが政策論点になっている。経済学者向け調査では54%が資産勘案に賛成した一方、制度運営コストや資産課税との役割分担を理由に反対論も広がっている。

ハイライト

  • 日本経済新聞のエコノミクスパネル調査で、医療費窓口負担に資産考慮を支持する経済学者は54%となった。
  • 厚生労働省は、配当などの金融所得を判定基準に2029年8月導入予定だが、預貯金や不動産は対象外のまま。
  • 反対意見では、資産勘案は医療費窓口でなく税制で対応すべきとし、資産把握の困難さや制度設計の難しさが論点となっている。

調査結果と制度見直しの論点

日本経済新聞の「エコノミクスパネル」によると、医療費の窓口負担を決める際に所得だけでなく資産も勘案するのが望ましいとの回答は54%だった。「そう思う」が34%、「強くそう思う」が20%を占めた。

70歳以上の医療費の窓口負担割合は、給与や年金などの所得を基準に1〜3割に分かれている。厚生労働省は75歳以上の保険料や窓口負担の判定で、配当などの金融所得を反映する仕組みを2029年8月から始めるが、預貯金や不動産などの資産は対象外のままとなっている。

資産勘案を支持する立場からは、高齢者の負担能力を所得だけで把握するのは不十分だとの指摘が出ている。一橋大の佐藤主光教授は、高齢者の支払い能力は資産による部分も大きく、資産把握の改善が急務だとした。米エール大の上武康亮教授も、所得が低くても多額の金融資産を保有する高齢者がいるとして、資産の反映を支持した。

一方で、慶応義塾大の中室牧子教授は、資産の種類によって換金のしやすさが異なる点を踏まえ、まずは配当など把握しやすい金融所得を公平に反映し、その後に預貯金など金融資産の扱いを検討する段階的な改革が現実的だとの見方を示した。

公平性と制度設計を巡る反対論

反対意見では、公平性を実現する手段は医療費窓口ではなく税制に求めるべきだとの主張が目立つ。カナダ・ブリティッシュコロンビア大の笠原博幸教授は、医療費への資産勘案は手間や費用がかかりすぎるとし、資産に応じた負担調整は金融所得や相続への課税で対応すべきだと述べた。

東京大の星岳雄特任教授も、公平性は医療費の窓口負担ではなく、所得または資産への課税で実現するのが望ましいとした。法政大の濱秋純哉准教授は、資産勘案が貯蓄への課税となって若年層の資産形成を阻害するほか、高齢者による生前贈与などの回避行動を招く可能性があるとして支持しなかった。

制度設計の難しさを重視する見方もある。明治学院大の岡崎哲二教授は、資産は把握が難しいうえ、同じ種類の資産でも収益性や流動性に幅があり、健康保険制度に組み入れるのは適当ではないと指摘した。高齢化に伴って医療保険財政の持続性が問われるなか、応能負担の精緻化と実務負担のバランスが今後の制度設計の焦点になる。

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