日本の公的年金、老後資金負担を圧縮, 年金ゼロなら必要額は1億円との見方

日本の公的年金、老後資金負担を圧縮, 年金ゼロなら必要額は1億円との見方
年金が老後資金を圧縮

物価上昇下で老後資金への不安が強まるなか、日本の公的年金が老後の生活費をどの程度支えているかを巡る見方が改めて示されている。公的年金がなければ老後の必要資金は1億円規模になり得る一方、現行制度があることでいわゆる「老後2000万円」問題は不足額の議論にとどまるという構図だ。

ハイライト

  • 日本の公的年金は65歳からの受給開始と実質20~25年の長期支給で、老後資金負担を大幅に圧縮している。
  • 公的年金がゼロの場合、必要な老後資金は1億円に上るが、現実の資金不足額で語られるのは老後2000万円程度としている。
  • 共働き女性の増加により将来の厚生年金受給額が押し上げられ、夫婦の場合は月32万円の年金水準も見込まれるとされる。

年金制度の支給期間と必要資金の考え方

日本経済新聞(Nikkei)によると、日経BOOKプラスで再構成された山崎俊輔氏の新刊抜粋では、日本の公的年金制度は世界でも早い受給開始年齢と長い受給期間を維持していると説明している。多くの先進国で受給開始年齢が67歳以上に引き上げられる流れがあるなかでも、日本は65歳からの標準受給を保っているという。

本文では、日本人の長寿化に伴って受給年数が実質的に伸びている点を強調している。1980年代から1990年代に60歳から年金を受け取っていた世代では老後期間がおおむね10年から15年だったのに対し、現在は65歳時点の平均余命ベースで男性約20年、女性約25年にわたり受給が続くとしている。

また、米国では公的年金を大きく見込まず老後に100万ドル規模、足元では150万ドル規模を想定する感覚が広がっていると紹介している。これに対し日本で語られる「老後1億円」は、公的年金収入を差し引かない生活費総額のイメージであり、現実の不足額として語られる「老後2000万円」とは意味合いが異なるとしている。

そのうえで、もし公的年金がゼロであれば老後の必要額は1億円になるとの見方を示し、日本の公的年金が日常生活費相当をカバーしているからこそ必要な自助資金が圧縮されていると位置付けている。

共働き拡大が将来の受給額を押し上げ

記事では、若い世代ほど年金額が下がるという通説にも変化が生じていると論じている。背景として、厚生年金に加入する女性の増加があり、専業主婦を前提とした旧来の世帯モデルでは将来の実態を十分に表せないとしている。

現役世代では結婚や出産後も正社員として働き続ける女性が増えており、厚生年金の加入期間が長い女性が今後増加する見通しだという。厚生年金に20年以上加入した女性が全体の半分以上になっていくとの年金財政検証結果にも触れ、夫婦それぞれが基礎年金と厚生年金を受け取る「ダブル年金」が家計の下支えにつながるとみている。

単純計算では、夫婦ともに会社員であれば月32万円の年金水準も視野に入り、従来のモデルとされる月23万円を大きく上回るとしている。ただし、家事や育児による時短勤務などで女性の受給額が抑えられる傾向もあるため一律ではないが、それでも老後資金不足への影響は大きいとしている。

単身者でも60歳まで働く前提から65歳まで働く前提への移行が進んでおり、将来の厚生年金額の押し上げ要因になるとみている。全体として記事は、「老後2000万円」を制度不信の象徴としてではなく、公的年金で基礎的支出を賄ったうえで上乗せ資金をどう準備するかという家計設計の問題として捉えるべきだと訴えている。

当社の以前の記事では、物価高の影響で「老後2000万円」では不足し、必要資金が最大「4000万円」規模まで膨らむ可能性がある点を整理しました。インフレ下では年金収入だけで生活費を賄いきれない局面も想定されるため、現役世代ほど早い段階から長期の家計設計や資産形成の前提を見直す重要性が高まると解説しています。

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