政府は2040年代までに原子力発電所を最大5基建て替える目標をまとめ、将来の電力需要増に備える方向を示している。AIの普及や脱炭素、エネルギー安全保障の重要性が高まるなか、民間が巨額投資を判断できる制度設計が課題になっている。
ハイライト
- 政府が2040年代までに2〜5基、2050年代までに11〜14基の原発建て替え数値目標を新行動指針に盛り込む方針。
- 1兆円超の初期投資や20年規模の建設期間への支援策検討が急務で、公的融資や固定費回収保障が論点。
- 電力市場の自由化・リスク分担の不透明さが投資抑制要因で、国のリスク引き受け制度整備が目標実現の鍵となる。
2040年代の建て替え目標と投資条件
日経によると、政府は2040年代までに2〜5基、2050年代までに11〜14基の原発を建て替える数値目標を原子力政策の新たな行動指針に盛り込み、今後の関係閣僚会議で正式決定する方向だ。昨年2月に閣議決定したエネルギー基本計画では「原発の最大限活用」を明記しており、足元で電源構成の1割に満たない原発比率を2040年度に2割程度へ引き上げる方針を示している。2040年ごろには、運転可能な原発のほぼ半分にあたる約15基が稼働開始から半世紀を超す見通しで、定量目標の明示には事業者が人員、技術、供給網の見通しを立てやすくする狙いがある。国内では現在、11原発24基が廃炉作業中で、関西電力は美浜原発の建て替えに向けた地質調査に着手している。
一方で、原発建設には1兆円超の初期投資と20年規模の建設期間が必要で、運転開始まで収益を生まない。このため、公的信用力を活用した融資、固定費回収の保証、インフレによるコスト増の補填といった支援策の早期導入が論点になっている。
電力市場と国のリスク分担
自由化された電力市場では、巨額投資の回収や資金調達の見通しを立てにくく、数値目標だけでは建て替えの実行性はなお限定される。規制変更に伴う追加投資に加え、核のごみの最終処分や、事故時に電力会社が過失の有無を問わず賠償を全額負担する現行制度も、民間だけでは抱えにくいリスクとして残っている。日本の原発事業は、国が政策をつくり民間企業が実施する「国策民営」で進んできたが、責任分担が曖昧だった側面がある。企業が合理的に投資判断できるよう、一定範囲を超えるリスクを国が引き受ける制度の検討が、建て替え目標の実現には欠かせない。
電力の安定供給と脱炭素の両立に加え、中東危機を受けてエネルギー安全保障への関心も強まっている。安全確保を前提に、原子力を持続的に活用するための制度改革が、日本の電力・ガス業界にとって重要な経営環境の整備につながりそうだ.
当サイトの以前の記事では、経済安全保障上重要な海外事業を後押しするため、政府がJBICの劣後出資を通じて投資リスクの一部を優先的に負担できるようにする法改正の成立を取り上げました。半導体や造船、レアアース、港湾運営などを対象に、採算が読みづらい国での供給網投資を進めやすくする狙いで、重要インフラや政策機能の拡充も盛り込まれています。
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