ニデックは過年度決算の修正に伴い、2025年3月期まで5期連続で配当と自社株買いが会社法上の分配可能額を上回っていたことを明らかにした。累計の超過額は約2400億円にのぼり、今後の監査や責任調査の進展次第で取締役や監査法人を巡る法的論点が一段と強まる可能性がある。
ハイライト
- ニデックは2021年3月期から2025年3月期まで、配当と自社株買いの総額が分配可能額を約80億円から約990億円上回り、累計超過額は約2400億円に達した。
- PwCジャパン監査法人は監査意見を不表明とし、監査結果や分配可能額のマイナス期があるため、実際の責任額は2400億円を下回る可能性がある。
- 株主代表訴訟や取締役責任の焦点は、分配時の経営陣の注意義務履行が問われ、2026年3月に設置の責任調査委員会が調査対象を拡大している。
決算修正が示した超過分配の規模
日経が報じた内容によると、問題の背景には車載機器を中心とする巨額の減損損失の計上と、関係会社株式の評価額の見直しがある。これにより単体の純資産が毀損し、2021年3月期から2025年3月期までの各期で、配当と自社株買いの総額が分配可能額を約80億円から約990億円上回っていた。ニデックの開示資料では、2025年3月期まで5年間の累計超過額は約2400億円となる。会計監査人のPwCジャパン監査法人は監査意見を不表明としており、今後の監査の結果によっては超過幅が見直される可能性もある。
会社法461条は、単体の純資産を基に算出する分配可能額を超える剰余金配当や自社株買いを禁じている。超過分配があった場合、株主には受領した配当金の返還義務が生じうる一方、実務上は返還請求のコストや手続き負担が大きく、実際に返還を求める事例は多くないとされる。
一方で、取締役などは会社に対する支払い義務や損害賠償責任を負う可能性がある。もっとも、ニデックでは分配可能額がマイナスだった期もあるため、実際の支払い対象額は累計超過額の約2400億円を下回る可能性がある。
株主代表訴訟と統治リスクの焦点
責任追及の論点としては、分配時に取締役らが職務上の注意義務を尽くしていたかどうかが焦点となる。会社が自ら責任を追及しない場合には、株主代表訴訟に発展する可能性がある。池田佳史弁護士は、過年度決算の訂正によって違法配当額が客観的に算定されるため、株主側による手続き開始は難しくなく、時効は大きな問題になりにくいとの見方を示している。また、鈴木正人弁護士は、超過が意図的なものだったのか、会計上の技術的問題だったのか、違反に至る経緯の解明が重要だと指摘する。
ニデックは2023年6月にも、2022年4月から9月期の中間配当と自社株買いが分配可能額を超えていたと公表していた。当時は会計監査人だったPwC京都監査法人も見落としていたと説明している。さらに2026年3月には、一連の会計不正を巡る現旧役員の法的責任を調べる役員責任調査委員会を設置しており、今回の超過分配も調査対象に含まれるとみられる。
過去の類似事例では、三洋電機では旧経営陣への請求が退けられた一方、オリンパスの粉飾決算事件では旧経営陣に違法配当や自社株買いを含む損害賠償が命じられている。今回も、当時の経営陣や関係者が問題を認識できたか、必要な注意義務を尽くしていたかが、ニデックの統治リスクと責任範囲を左右することになる。
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